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秘密
第5章 仮面の下
「あの…、お相手の方って…」
やっと楽になった沙織は気になっていた事を口にした。
「あぁ、5年位前に妻を亡くした孤独な男性57才」
「はぁ…」
沙織には西村の顔しか思い浮かばない。
「まあ、ホントにまったくその気がないなら無理強いはしないわよ」
「ホントにまったくその気がないわ」
咲子がオウム返しで答えた。
「まさか、まだあの男に未練があるっていうんじゃないわよね」
食べるのを止めた百合子が冷静に問い掛けた。
「えっ?」
二人は同時に百合子を見つめる。
「単身赴任から音信不通になった秀夫さんよ…」
「あら、語呂合わせ?」
咲子がクスリと笑う。
「あ、最後の日にたまたま会ったっけ……」
「そんな昔の話やめて」
咲子はため息をつきながら立ち上がり、急須をお盆にのせてキッチンに入っていった。
その背中に目をやりながら、百合子は小声で話を続ける。
「姉の元亭主と私、駅ですれ違ったの。…思い詰めた顔でね、私に気が付いても、あぁ、どうも…ってそれっきり…」
「え…」
百合子の話はいつも飲み込みにくい。
やっと楽になった沙織は気になっていた事を口にした。
「あぁ、5年位前に妻を亡くした孤独な男性57才」
「はぁ…」
沙織には西村の顔しか思い浮かばない。
「まあ、ホントにまったくその気がないなら無理強いはしないわよ」
「ホントにまったくその気がないわ」
咲子がオウム返しで答えた。
「まさか、まだあの男に未練があるっていうんじゃないわよね」
食べるのを止めた百合子が冷静に問い掛けた。
「えっ?」
二人は同時に百合子を見つめる。
「単身赴任から音信不通になった秀夫さんよ…」
「あら、語呂合わせ?」
咲子がクスリと笑う。
「あ、最後の日にたまたま会ったっけ……」
「そんな昔の話やめて」
咲子はため息をつきながら立ち上がり、急須をお盆にのせてキッチンに入っていった。
その背中に目をやりながら、百合子は小声で話を続ける。
「姉の元亭主と私、駅ですれ違ったの。…思い詰めた顔でね、私に気が付いても、あぁ、どうも…ってそれっきり…」
「え…」
百合子の話はいつも飲み込みにくい。