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秘密
第6章 酔い
「更年期にこんなに元気でいられるのも仕事のお陰なのよ」
沙織を安心させるようにそう言って家を出た咲子は、いつもと変わらぬ笑顔だった。
ほっとはしたものの、それでも今日は早く帰宅しようと思っていた沙織は、倉本の言葉に惑わされていた。
逢いたい想いがつのる。
顔を見るだけでいい…
ため息が退屈や諦めだけのものではないと、ふと気付く。
倉本の囁き、視線、唇、舌、指…、沙織の躰に残る蕩ける愛撫の記憶。その1つ1つがため息とともにはっきりと色づいていく。
休日の忙しさのお陰で職場では辛うじて気をまぎらわせていた沙織も、帰る時間が近づくにつれて込み上げてくる胸の高鳴りを隠すのに必死だった。
「オーナー大した事なくてよかったですよね」
更衣室で私服に着替えながら杏奈が言う。
「そうね」
素っ気ない返事の純子の横で、沙織はもうバッグを手にしていた。
「ごめんなさい、お先に失礼します」
「あ、お義母さんお大事に」
「お大事にね」
「ありがとう、それじゃ失礼します」
半分真実の言い訳が、嘘をつく後ろめたさを少しだけ軽くした。
少しでも早く逢いたい
1秒でも長く傍にいたい…
沙織は駅に向かって駆け出した。
沙織を安心させるようにそう言って家を出た咲子は、いつもと変わらぬ笑顔だった。
ほっとはしたものの、それでも今日は早く帰宅しようと思っていた沙織は、倉本の言葉に惑わされていた。
逢いたい想いがつのる。
顔を見るだけでいい…
ため息が退屈や諦めだけのものではないと、ふと気付く。
倉本の囁き、視線、唇、舌、指…、沙織の躰に残る蕩ける愛撫の記憶。その1つ1つがため息とともにはっきりと色づいていく。
休日の忙しさのお陰で職場では辛うじて気をまぎらわせていた沙織も、帰る時間が近づくにつれて込み上げてくる胸の高鳴りを隠すのに必死だった。
「オーナー大した事なくてよかったですよね」
更衣室で私服に着替えながら杏奈が言う。
「そうね」
素っ気ない返事の純子の横で、沙織はもうバッグを手にしていた。
「ごめんなさい、お先に失礼します」
「あ、お義母さんお大事に」
「お大事にね」
「ありがとう、それじゃ失礼します」
半分真実の言い訳が、嘘をつく後ろめたさを少しだけ軽くした。
少しでも早く逢いたい
1秒でも長く傍にいたい…
沙織は駅に向かって駆け出した。