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秘密
第6章 酔い
慎一郎が咲子の顔をじっと見つめた。


「……あ、そうか、そうだった、ハハ…」


思い出したように慌てて笑う夫に、沙織は情けなくて腹が立った。


「百合子、その話もういいわよ」


咲子は、長くなりそうな百合子の話を慌てて遮った。


「…そっか、今日はあなたに姉さんの再婚の話ばかりを聞かせてたせいね、あはは…、いつも話があちこちに飛んじゃってゴメンね、…あら、やっぱりおいしいわねこのケーキ…」


百合子のお喋りは止まらない。


「百合子、喋るか食べるかどちらかにしなさいよ」

「あははっ…、姉さんの言う通りよね、でもそんなのムリムリ…、ここへは喋りに来てるの私…あ、やだ、イチゴが飛び出しちゃった…」


「ぶ…あははは…」

「まったくもう…ふふっ…」


夫と義母が笑う一方で、時間が気になる沙織は、いつまでも帰らない百合子にイラついていた。



待っているかもしれない

きっと待ってる

きっと…


ケーキの味もコーヒーの味もどうでもよかった。

和やかで平和な笑いの中で沙織はひとり、心に吹き荒れる切ない想いを抱きしめていた。



逢いたい

あなたに逢いたい


ごめんなさい

ごめんなさい





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