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秘密
第6章 酔い
「やっと静かになったな…」


百合子が帰った後、慎一郎が空いた食器をキッチンへと運ぶ。


「子供が大人になって帰りが遅くなったりすると、話し相手がいなくて寂しいのね。
百合子は昔からお喋りだったから」


咲子はそう言うと、慎一郎からコーヒーカップを受け取りスポンジを泡立てた。


「………」


沙織は二人の背中を見つめ、勇気を振り絞って携帯を開いた。


「あら、メール…」


着信表示のない待ち受け画面を見つめ、ずっと頭の中で組み立てていた芝居を実行に移した。


「…何かあったのかしら?」

「どうしたの?」


台本通りに二人が振り向いた。


「あ、えぇ、純子さんからなんですけど…。
私に相談したい事があるらしくて、今、駅前の喫茶店まで来てるみたいなんです」

「あら、純子さんて同じ職場の?」

「えぇ…」

「まあ、珍しいわね」

「どうしたんだろう今頃…」


慎一郎が時計を見た。

7時20分。


「と、とにかくちょっと行ってきます」

「そうね、外は冷えるから何か羽織った方がいいわ。…夕飯はどうするの?」

「純子さんの話を聞きながら済ませます」


新たな台詞が口をついて出た。



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