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秘密
第6章 酔い
「あまり遅くならないようにね、電話くれたら迎えに行くよ」

「ありがとう、でも…あなたも明日早いんだし、お風呂に入って先に休んでて」


沙織は急いで階段を上がり、バッグと薄手のコートを持って下りてきた。


「慎一郎、テーブル拭いてきて…」

「はいはい…」


親子の会話にほっとしながら、沙織はコートを羽織った。


「すみません、なるべく早く帰ります」

「気をつけてね。
心配だから帰る途中に電話してちょうだい」

「わかりました」

「純子さんもきっと、話してしまうとすっきりすると思うわ、誰かさんみたいに、うふふ…」

「それじゃきっと長話だな、あはは…」

「そうかも知れないわ」


沙織は目元だけで微笑み、二人に背を向けて玄関に向かった。


「行ってきまーす」

「はーい、気をつけてね、いってらっしゃい」

「いってらっしゃい」


キッチンからの二人の声はドアに阻まれ、駆け出した沙織の耳には届かなかった。


きっともう帰ってる

行く約束なんてしてないもの

もしかしたら今日はやめてしまったのかも知れない


沙織は走った。


まさか、こんな時間に私が来るなんて思ってる筈がない


沙織は走った…。




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