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秘密
第6章 酔い
日曜日の疲れを癒しに人々は家路を急ぐ。

流れに逆らって走る沙織は、明らかに道を外していた。
けれども足は急ぐ。

澄んだ空気が髪と頬を冷たく責めても何も感じない。


ハァ…ハァ…ハァ……


息を切らして駅にたどり着き、出発直前の電車に飛び乗った。

空席だらけの電車内で立ったまま、ドアの向こうをゆっくりと移動する町の影を追う。



駅ですれ違うかも知れない

店に着く前に出会うかも…


降りてからの道順を何度も頭に描き、沙織は倉本の姿を捜した。


いなくても構わない

その方が楽になれる

ただ確かめたいだけ



改札を抜け、ネオンライトに映し出された人影を確認しながら足早に歩く。

見覚えのある薄暗い路地に入った時、急に足が重くなった。


「………」


こんな事までして、いったい何になるのだろう…

こんな恐ろしい事を仕出かして

私はどこへ向かっているのだろう…

何の覚悟もないまま

ただ一時の夢に、酔っているだけではないだろうか

現実から目を背け

甘い囁きに

甘い陶酔に

身を任せて

逃げ出ているだけ


あの人を利用して


………




沙織は唇を噛み締め、鉛のように重い扉をゆっくりと開いた。





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