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秘密
第6章 酔い
「自分勝手な俺の事なんか放っておけばいいじゃないか」


沙織は少したじろぎながらもその瞳を切なく見上げた。


「で、でも、掛けをしたんでしょう?」



「……、うん…」

「来ると思ったって…」

「………」


悪戯がバレた時の子供のように俯いて目を反らす倉本に、愛しさが込み上げ抱きしめてしまいたくなる。


「健さん…、…っ…」


顔を上げた倉本は堪えきれずに沙織を引き寄せ、思い切り抱きしめた。


「……沙織…」

「………」

「来て欲しかったんだ…」


耳に伝わるその声は胸の奥から絞り出す呻きのように全身に響きわたり、幸せと怖れに震える沙織の頬を濡らした。


「俺の事、……いや、いい」


倉本の親指が目元をそっと拭い、憂いを含んだ瞳が近付いてくる。


「逢いたくて来たの」


かすかに微笑んだ倉本の唇が沙織の唇に柔らかく重なった。


「…ン…、っ…」


忍び込んでくる舌を受け入れた途端、倉本は欲望を吐き出すかのように激しく絡み付いてきた。


「ンンッ…、うっ、んっンンッ…」


アルコールの匂いがした。


もっと抱きしめて…


くらくらと目眩がしそうなキスを沙織に浴びせると、倉本は沙織の腕を掴んで公園の奥へと歩き出した。




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