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秘密
第6章 酔い
「…ま、待って…」


腕を強く引かれながら、沙織は公園の出口を振り返った。


帰らなければならない


中央にぼんやりと灯っている照明は片隅にあるトイレの辺りをぼんやりと照らしている。


「私、時間がないの…」

「わかってる」


倉本について行きたい想いと、帰りたい気持ちが交錯する。

本心がどこにあるのか、欲望と理性のどちらに身をゆだねればいいのか。沙織は立ち止まる事ができないまま、何度も振り向いた。


トイレの裏手は明かりの届かない暗闇で、冷たい空には欠け始めた月がくっきりと浮かんでいる。


「………」


鼓動が早くなっていた。

目の前の通りは街灯もなく、木立が二人を隠すように並んでいる。

倉本がようやく沙織から腕を離した。


「…怖い?」


トイレの壁を背にした沙織に倉本の瞳が光る。


「………」


「怖いって顔に書いてある」


さっき見せた子供のような顔は消え失せ、捕らえられて怯える獲物を、眺めて楽しむ表情へと変わっていた。




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