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秘密
第7章 剥がれた仮面
「沙織さんも冷たい方がいいかしら」

「あ、はい、ありがとうございます」


用意されていたグラスに注がれる水を見つめながら、沙織は夫の隣に腰をおろした。


「躰が冷えないうちに早く寝た方がいいわよ」

「はい、そうします」


咲子の気遣いと喉を通る冷たい水が、沙織の気持ちをいくらか和らげた。


「あら、寒気がするんじゃないの?」

「えっ?」


膝の上で手を添えて持っているにもかかわらず、グラスの水が細かく震えている。


「あ、いえ大丈夫です」


慌ててテーブルに置いたグラスからこぼれた水が、沙織の手を濡らした。


「大丈夫か?」


義母が差し出したティッシュで手を拭きながら、「大丈夫」と夫に返事をする。


「早くやすんだ方がいいわ、ほら、慎一郎、あなたももう寝なさい」

「沙織…」

「すみません、お義母さん」


沙織は先に立った夫の手を無視して一人で立ち上がった。


「ゆっくりやすんでね、おやすみなさい」

「おやすみなさい」


震えは、慣れない怒りを抑えているせいだった。

胸が苦しく呼吸が辛い。

沙織は先に階段を上がり、夫には目もくれず背中を向けてベッドに入った。


「沙織、大丈夫?」

「どうかしら…」




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