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秘密
第7章 剥がれた仮面
沙織は寝返りを打って夫に顔を向けた。


「キスマーク?」


驚いた夫が妻を見る。


「えぇ、それって…動かぬ証拠でしょう?」

「まあ、そうだね」


夫の視線が天井に移った。


「ねぇ、あなたはどう思う?」

「なにが?」

「浮気よ」

「……僕には無理だな…。よそに女性をつくるなんて」

「そうなの?」


沙織の演技には磨きがかかり、夫にもっと嘘を言わせようとわざと驚いてみせた。


「そりゃそうだよ、居心地のいい家庭が一番に決まってるじゃないか」


いつもより口数が多い夫。


「そうなのかしら…」

「ましてやキスマークなんて…」


獲物の急所が目の前に晒され、思わず微笑みゴクリと唾を飲む。


「ねぇ、脱いでみて」

「えっ?」


普段の沙織からはあり得ないその言葉に、慎一郎は驚いて目を見張った。

無邪気な顔の沙織。


「どこに付けられていたのか教えてあげるわ」

「風邪ひくからいいよ、ほら、もう寝よう、明かりを消すよ」

「…私、見たの」

「えっ?」


明かりを消そうとリモコンに手を伸ばした慎一郎の手が途中で止まった。




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