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秘密
第7章 剥がれた仮面
「…………」
今のは何?
空耳だろうか…
目の前の人間は
確か…私の夫で
私は
この人の妻の筈…
…違うの?
「………」
「さ、沙織っ…ごめん、ごめん…」
頬を押さえてぼんやりしている妻に、我に返った慎一郎は顔をひきつらせた。
頬は痛くなかった。
言葉が胸に突き刺さったまま、抜けないように剣先がいくつにも分かれて折れ曲がる。
「やっとわかった…」
「えっ」
「あなたは…、お義父さんと同じなんだわ…」
「…な、何を言い出すんだ」
「お義父さんもそうやって、同じようにお義母さんを傷つけた…」
「…っ…ち、違う…」
「違わない」
「違う…」
「同じよ…」
「………」
頬を叩かれて途切れた怒りは胸の底で冷たく凍りつき、重く沈んだまま一生解けずに沙織を蝕んでいくようだった。
「それほど愛せる人なら傍に置いてあげたらいい」
「沙織…」
「素敵な人ならお義母さんもきっと…」
「ダメだ、沙織、何を言ってる、ここにいてくれ」
「きっとすぐにかわいい赤ちゃんが産まれて、みんなが喜ぶわ…」
沙織は泣かなかった。
言葉と感情が噛み合わず、不気味に笑っていた。
今のは何?
空耳だろうか…
目の前の人間は
確か…私の夫で
私は
この人の妻の筈…
…違うの?
「………」
「さ、沙織っ…ごめん、ごめん…」
頬を押さえてぼんやりしている妻に、我に返った慎一郎は顔をひきつらせた。
頬は痛くなかった。
言葉が胸に突き刺さったまま、抜けないように剣先がいくつにも分かれて折れ曲がる。
「やっとわかった…」
「えっ」
「あなたは…、お義父さんと同じなんだわ…」
「…な、何を言い出すんだ」
「お義父さんもそうやって、同じようにお義母さんを傷つけた…」
「…っ…ち、違う…」
「違わない」
「違う…」
「同じよ…」
「………」
頬を叩かれて途切れた怒りは胸の底で冷たく凍りつき、重く沈んだまま一生解けずに沙織を蝕んでいくようだった。
「それほど愛せる人なら傍に置いてあげたらいい」
「沙織…」
「素敵な人ならお義母さんもきっと…」
「ダメだ、沙織、何を言ってる、ここにいてくれ」
「きっとすぐにかわいい赤ちゃんが産まれて、みんなが喜ぶわ…」
沙織は泣かなかった。
言葉と感情が噛み合わず、不気味に笑っていた。