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秘密
第7章 剥がれた仮面
花の苗を一緒に選んだ事や、家族旅行に行った事、いつも寄り添ってくれた事が苦い思い出になってしまう。

大切に築き上げてきた関係を、己れの欲望の為に犠牲にしようとする夫の軽さに苛立つ。


娘の幸せだけを願って生きてきた母は嘆くだろう。夫を軽蔑し、義母との良い関係も終わる。


「………」


倉本の事が頭を過った。


夫と同じ事をしている私に、罪はないのだろうか…

夫を責められる程、私は潔白だろうか…

もっと本当の気持ちをぶつけ合っていれば、今とは違う夫婦になっていたのかもしれない



私が目をつぶれば…

夫を信じて今回だけは…

義母はそれを望むだろう


夫の気持ちは

私は…


「………」


もう

どうでもいい

どうでも…



すべてが煩わしかった。

沙織は怒り疲れ、迷い疲れ、虚無感に襲われて闇に吸い込まれるように眠りに落ちていった。




─────……




必要のない朝が来る。





「慎一郎、早くしないと遅刻よ」


遅く起きた慎一郎は、食事もそこそこに咲子に急き立てられていた。


「ごちそうさま、いってきます」


バタバタと席を立つ慎一郎の食器を片付けながら、沙織はその背中を見つめ、冷めた心で口を動かした。


「あなた、いってらっしゃい、気をつけてね」


笑顔も忘れなかった。




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