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秘密
第7章 剥がれた仮面
「やけに落ち着きがないわねぇ、大丈夫かしら?」


慎一郎を送り出してから、咲子は心配顔でテーブルを拭き始めた。


「大事な契約がある日に寝坊しちゃったからだと思います」

「そう…、あの子にしては珍しいわね、ふふっ…」

「私が起こしてあげればよかった、すっかり忘れてしまってて…」


沙織は思ってもいない事を呟いた。


「あら、甘えさせたらダメよ、こっちだって忙しいんだもの、構ってばかりいられないわよ」

「そうですね、ふふっ…」


食器を洗う手を止め、顔を見合わせて義母と微笑み合ういつもの時間。


すっかり馴染んだこの家のキッチンやリビング、庭に咲き誇る季節の花。

ここが沙織の棲家だった。




「あ、そうそう、沙織さん」

「はい」

「じつは松野さんに旅行に誘われてて…」


咲子の言葉に沙織は身を乗り出した。


「本当ですか?
お義母さん、お友達と旅行なんて久しぶりなんじゃないですか」

「そうなんだけど…。
それが、もう宿を予約したらしいの…、しかも金曜と土曜。あの人私にお店を休ませる気だわ」


そう言う咲子の表情は、言葉に反して嬉しそうに見える。




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