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秘密
第8章 秘密
純子達の明るい声を聞き、沙織は思い直した。


早めに病院に行ってもらおう

義母に合わせて休みを取って、一緒について行けばいい

今は旅先でゆっくりと躰を癒してほしい


二人の母親といいオーナーといい、たまには自分をねぎらって無理なんてしないで


沙織はそれぞれにどこか共通点のある3人の身近な女達を尊敬し、慕っていた。






忙しい日は時間が経つのも早い。

沙織は楽しく仕事を終わらせ、純子と杏奈にはこれから夫とデートだと嘘をついた。


「ふ-ん、で、その流れで明日はお休みってワケね」


羨ましげに沙織を冷やかす二人を相手に、嬉しそうな顔をして職場を後にした。

嬉しい事に変わりはない。


本屋の隣の喫茶店で、サンドイッチとコーヒーを頼んで気持ちを落ち着かせる。

暫くして倉本からメールが届いた。


『時間通りに行きます』

『ご連絡ありがとうございます』


逢うまでのじれったい時間にさえ、幸せの意味を見つけられそうだ。

昭和の風情漂う店内で、古ぼけたゼンマイ式の柱時計を見つけて微笑み、振り子の動きに目を細める。



カチカチカチカチ………ボーン…



6時半の報せを聴くと、沙織は立ち上がってレジに向かった。




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