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秘密
第8章 秘密
「………」


沙織はさっき見た女の口を真似て唇を舐めてみた。


あんな事を誰もがやっているとは思えない

あんなものが私の口に入るのだろうか

彼は悦んでくれるだろうか…

変な女だと思われるかもしれない


悩みだした沙織は鏡に両手を添え、俯いた顔を少し上げ気味にして自分を見つめた。それからもう一度、口を開けてゆっくりと舌を伸ばし、唇を端からなぞるように舐めながら眼を細めた。


「………」


そこに、妖しく淫らな女が現れた。



変だ

やっぱりできない


沙織は良い方法が見つからないままバスタブに浸かるのを諦めて躰を拭いた。






洗面所の鏡の前で肌を整え、髪を乾かす。
背伸びをして買ったランジェリーを緊張しながら身に纏う。

夫には見せられなかったワインレッドの下着。

乳房を寄せてきちんと装着すれば、より見事な谷間ができる。
お揃いのブラとショーツの上部を飾る黒のレースに合わせて、沙織は黒く透けたキャミソールを準備していた。


気に入ってくれるだろうか…

すぐに抱きしめて欲しい


緊張で強張る顔に紅をひく。

沙織は鏡を見つめてすーっと息を吸い、ゆっくりと吐き出してからそこを出た。



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