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秘密
第2章 誘い
洗濯物を干し掃除機をかけ、花瓶の水を替えながら、沙織は夫よりも咲子の方にすまなさを感じ始めていた。


いったいこの家庭のどこに不満があるというのだろう

どこから見ても平和そのものなのに…


何も知らない夫を

私を我が子同然に愛してくれる義母を……


馬鹿な思いは捨てよう

やっぱり間違ってる


沙織はぐっと息を吸い込み心を決めた。


私にはその気がないという事をわかってもらうだけ

それだけだ

それだけ


何度も頭で繰り返す。
自分自身に言い聞かせていなければ、今決めた事を、何の為に会うのかを、忘れてしまいそうだった。


間違いは犯せない
私らしくない

私にできる筈がない





戸締まりをして家を出たところで、携帯の着信音が鳴った。

咲子からだ。


「はい、もしもし…」

『あ、沙織さん?
私ね、さっき松野さんに食事に誘われちゃったから、帰りが遅くなりそうなの』


声が弾んでいた。


「あぁ、松野さん…
楽しくなりそうですね」

『そうね。ふふ、彼女きっとまたお嫁さんの愚痴よ…』

「ふふ…楽しんできて下さい」


沙織も明るい声で答える。


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