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秘密
第9章 露見
「平気じゃないっ!…平気じゃないわ、…あなたがいないと私、どうやって笑ったらいいのかもわからない…」


沙織は、倉本の腕の中では嘘がつけなくなっていた。
誠実でいたかった。
自分の心に。


「どうしたんだ、大袈裟だなぁ。
言っただろう?…利用していいって。これでも俺はすごい包容力の持ち主なんだ」


倉本はそう言うと沙織を目一杯抱き締めた。


「やだ、く、くるし…」

「分かる?
この俺様の抱擁力」


更に力が強まる。


「わ、わかった、か、ら…」

「よし、それなら許す」


腕を弛めながら照れて笑う倉本に、思わず沙織も吹き出した。


「ふふっ…、確かに凄い抱擁力だった、…あはは、変な人…」

「だろう?
だから気にするな」


沙織の涙を指で拭きながら、倉本は沙織の頭を撫でた。


「酷い化粧だな。
まるで別人だ」

「もうっ、意地悪ね」


沙織が口を尖らせると、倉本の唇が重なった。


「…ン…」


温かく柔らかな唇が沙織を落ち着かせるように重なっては離れ、沙織が甘えてくるのを待つ。

沙織は倉本の背中に手を回し、躰ごと寄りかかった。

唇は頬を伝い、最後に沙織の額に押し当てられた。


「………」


沙織は揺るぎない愛情と信頼のキスを、眼を閉じて受け入れた。



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