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秘密
第9章 露見
「ごめんなさい、お願いします…」


沙織の言葉は小さくなって、ドアに消えた倉本には届かなかった。


よりによって指輪を取りに行ってもらうなんて最悪…


自己嫌悪に陥りながら、沙織は上昇してくるエレベーターの階数表示を眺めていた。


…2、…3、…4、…5


ドアが開いた


「………」


やり過ごすつもりの沙織は、人が乗っている事に気付いても中を覗かなかった。


「…んン…あァン…もっとぉ…」


喘ぐ女の声が聞こえた。


「…っ…」


沙織はドアから離れて頬を赤くして俯き、ドアが閉じてくれるのをじっと待った。



ガタッ…、ゴン…ゴン…ゴン…


なに?


見れば間の悪い事に、倒れたキャリーバッグがドアに挟まっている。

なぜ気付かないのかと呆れた沙織は、半開きでガタガタしているドアから倒れたバッグを押し戻そうと手を掛けた。


「あ…」


男の声がした。


「ン…ねぇはやくぅ…」


沙織は女の甘い声に慌てて手を離し、再びバッグが倒れた。


もうやだ…


ドアはしつこく開閉を繰り返す。

沙織は何もしない男にイラついて顔を上げた。


「…………」


「…沙織…」


「…っ…」




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