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秘密
第9章 露見
温めた肉まんを頬張る二人を眺め、おかしな事になってしまったと思いながら沙織はお茶を啜る。
母にはとても言えない真実を前に泣くこともできない沙織は、二人の世間話に時々相槌を打つだけでほとんど黙っていた。
倉本は奈美子に、自分は沙織の元同僚で今日は街で偶然出逢ったと説明した。
奈美子は何度か頷き、深く追求する事もなく気軽な会話を楽しんでいた。
「お母さん、私、今日はここに泊まってもいい?…なんだか疲れちゃった」
自然の成り行きのような感じで上手く言葉を紡ぐ。
「それは構わないけど、あなた慎一郎さんには連絡してあるの?」
「大丈夫…」
「そう…。
それなら丁度良いわ、洗濯物を取り込んで、お風呂を洗ってくれないかしら。忙しくてすっかり忘れていたの」
「はぁい。
お母さん、倉本さんを早く帰してあげてね。
いつも話しが長いんだから…」
「あら失礼ね、そうでもないわよ」
沙織はすまなそうな視線を倉本に送り、つと立ち上がって廊下に出て行った。
倉本にお茶を注ぎ、奈美子がため息をつく。
「あの子、父親が亡くなってから、やけに私に気を使うようになってしまって…」
母にはとても言えない真実を前に泣くこともできない沙織は、二人の世間話に時々相槌を打つだけでほとんど黙っていた。
倉本は奈美子に、自分は沙織の元同僚で今日は街で偶然出逢ったと説明した。
奈美子は何度か頷き、深く追求する事もなく気軽な会話を楽しんでいた。
「お母さん、私、今日はここに泊まってもいい?…なんだか疲れちゃった」
自然の成り行きのような感じで上手く言葉を紡ぐ。
「それは構わないけど、あなた慎一郎さんには連絡してあるの?」
「大丈夫…」
「そう…。
それなら丁度良いわ、洗濯物を取り込んで、お風呂を洗ってくれないかしら。忙しくてすっかり忘れていたの」
「はぁい。
お母さん、倉本さんを早く帰してあげてね。
いつも話しが長いんだから…」
「あら失礼ね、そうでもないわよ」
沙織はすまなそうな視線を倉本に送り、つと立ち上がって廊下に出て行った。
倉本にお茶を注ぎ、奈美子がため息をつく。
「あの子、父親が亡くなってから、やけに私に気を使うようになってしまって…」