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秘密
第9章 露見
「あの、いつ亡くなったんですか?」
「沙織が10才の時に…、脳腫瘍だったの」
「それからずっと二人で」
「えぇ、小さいけどなんとか家は残してくれたわ」
奈美子は昔を懐かしむような顔で微笑んだ。
「おとなしかった子が、ますます無口になっちゃって」
「職場でも目立つ方では…」
「だと思うわ。それでも高校の頃に比べたらずっとマシなのよ」
「そうなんですか?」
「大学には行かせてあげたくて、私も仕事に追われてたの。朝は早いし夜は遅いしで、娘になかなか構ってあげられなくて……。
何も言ってこないのは、何もないからだろうって、思っちゃうのよね」
「………」
「いつの間にか無口になってしまって…。
複雑な年頃だったから、失恋でもしたのかもしれないわ。…でも相当な痛手だったらしくて、まるで男性恐怖症」
「……でも、立ち直ったみたいですね」
「そうね、結婚してくれたから」
「………」
倉本は言葉に詰まり、湯呑みを手にして喉を潤した。
「それももしかしたら、私を安心させる為だったのかしら…」
「沙織が10才の時に…、脳腫瘍だったの」
「それからずっと二人で」
「えぇ、小さいけどなんとか家は残してくれたわ」
奈美子は昔を懐かしむような顔で微笑んだ。
「おとなしかった子が、ますます無口になっちゃって」
「職場でも目立つ方では…」
「だと思うわ。それでも高校の頃に比べたらずっとマシなのよ」
「そうなんですか?」
「大学には行かせてあげたくて、私も仕事に追われてたの。朝は早いし夜は遅いしで、娘になかなか構ってあげられなくて……。
何も言ってこないのは、何もないからだろうって、思っちゃうのよね」
「………」
「いつの間にか無口になってしまって…。
複雑な年頃だったから、失恋でもしたのかもしれないわ。…でも相当な痛手だったらしくて、まるで男性恐怖症」
「……でも、立ち直ったみたいですね」
「そうね、結婚してくれたから」
「………」
倉本は言葉に詰まり、湯呑みを手にして喉を潤した。
「それももしかしたら、私を安心させる為だったのかしら…」