この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘密
第9章 露見
「お母さん、後はお風呂が沸くのを待つだけよ」
倉本は沙織がテーブルに戻るのを待って、席を立った。
玄関先で奈美子に礼を言って外に出ると、門の所まで沙織が見送りに来た。
「健さん、お母さんに何か話した?」
心配そうに沙織が聞いた。
「何も話せないよ。
自分の事さえ上手く話せなかった」
「よかった。ありがとう」
「指輪がない事、聞かれると思うよ」
「そう…」
「大丈夫?」
「えぇ平気、大丈夫」
きっぱりと言い切った。
「お母さんは君をとても愛してるんだね」
「えぇ、そうなの」
僅かな笑みを浮かべ沙織が頷く。
「沙織、今日は…とんでもない事に…」
「えぇ、でも…、今日がなかったら私、一生不幸だった…」
沙織の口が歪んだ。
「次にここへ来る時は、ちゃんとご挨拶させて貰うつもりだから」
髪から頬に降りてくる手のひらに頬擦りをして、沙織は小さく頷いた。
じゃあね、と言って歩き出す倉本の背中は、いつでも自分をおぶってくれそうだった。
薄暗い外灯の光を受けて何度も振り返るその姿に「ありがとう、健さん」と小さく声を掛ける。
あなたに会っていなければ、何も知らずに今もあの家にいた
今日までの、惨めで無意味な3年半…
沙織はまた吐き気をもよおしながら、虚構でしかなかった結婚生活の終結を決めた。
倉本は沙織がテーブルに戻るのを待って、席を立った。
玄関先で奈美子に礼を言って外に出ると、門の所まで沙織が見送りに来た。
「健さん、お母さんに何か話した?」
心配そうに沙織が聞いた。
「何も話せないよ。
自分の事さえ上手く話せなかった」
「よかった。ありがとう」
「指輪がない事、聞かれると思うよ」
「そう…」
「大丈夫?」
「えぇ平気、大丈夫」
きっぱりと言い切った。
「お母さんは君をとても愛してるんだね」
「えぇ、そうなの」
僅かな笑みを浮かべ沙織が頷く。
「沙織、今日は…とんでもない事に…」
「えぇ、でも…、今日がなかったら私、一生不幸だった…」
沙織の口が歪んだ。
「次にここへ来る時は、ちゃんとご挨拶させて貰うつもりだから」
髪から頬に降りてくる手のひらに頬擦りをして、沙織は小さく頷いた。
じゃあね、と言って歩き出す倉本の背中は、いつでも自分をおぶってくれそうだった。
薄暗い外灯の光を受けて何度も振り返るその姿に「ありがとう、健さん」と小さく声を掛ける。
あなたに会っていなければ、何も知らずに今もあの家にいた
今日までの、惨めで無意味な3年半…
沙織はまた吐き気をもよおしながら、虚構でしかなかった結婚生活の終結を決めた。