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秘密
第10章 秋の日に…
逃げ出したくなるような激痛に耐え、渾身の力を込めて産み落とした我が子の産声は力強く、希望と勇気を与えてくれた。


「ママ、気をつけてね」

「はいはい、うふふっ」


父親に抱かれ、後ろを向いている娘が階段で母親を気遣う。


「ほら、電車が入ってきたよ」

「やったー」


土曜という事もあって車内は混み合い、3人はドア付近に陣取って外を眺めていた。


「空がきれい」

「うん、いい天気だ」

「来週はあなたの家に理沙を連れて行かなくちゃ」

「あはは、引っ張りだこだな」

「理沙はお義父さんが好きみたいよ」

「へー、それは手強いライバルだ」

「ママみてみて、鳥さんが飛んでる」

「ホントだ。
理沙、この電車はね、ママがまだお姉さんの頃にいつも乗っていたのよ」

「ふーん」


背伸びをして外を眺めている理沙。その細く結われた短い三つ編みが2つ、首を動かす度に左右に揺れる。

つり革に掴まり新聞を器用に折り返して読んでいた初老の男が、目を細めてそれを見ていた。


「ねぇママ、あの鳥さんなんていうお名前?」

「どれだ?
パパが教えてやろう」


男と目を合わせ、どうも、と笑顔を交わして娘の指差す方向に目を向けた。




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