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秘密
第10章 秋の日に…
「なんだ?…どれだ?」
「ほら、あれだよー
」
「あ、あれはカラスかな?」
「ウソだよ、カラスは黒いんだよパパ」
男がクスクスと愉快そうに笑い、読み終えた新聞を棚に置くと、倉本に会釈をして停車駅で降りて行った。
新しい客を乗せ、再び電車が動き出した。
「ママ、あれ川?」
「あ、遠いのによくわかったね理沙」
「あ、あれは?」
「どれ?」
「あの川だよ、赤いの」
「あ…」
近づいて来る川の土手に沿って、カーペットを敷き詰めたような赤い色が見える。
「ママ、あの赤いのお花?」
「えぇ、…彼岸花」
「ヒガンバナ?」
「そう、秋の始めに咲くのよ」
「ふーん」
あの家にも
きっと咲いているだろう
誰かに教えてもらわなくても、毎年必ずそこに咲く
あの頃よりも増えている筈だ
あの人は
あの花が咲く度に
私を思い出すに違いない
「きれいだね」
「ママね、あのお花大好きなの」
「ふーん」
「でもね、毒があるのよ」
「ふーん…ドクってきれいだね」
「ほら、あれだよー
」
「あ、あれはカラスかな?」
「ウソだよ、カラスは黒いんだよパパ」
男がクスクスと愉快そうに笑い、読み終えた新聞を棚に置くと、倉本に会釈をして停車駅で降りて行った。
新しい客を乗せ、再び電車が動き出した。
「ママ、あれ川?」
「あ、遠いのによくわかったね理沙」
「あ、あれは?」
「どれ?」
「あの川だよ、赤いの」
「あ…」
近づいて来る川の土手に沿って、カーペットを敷き詰めたような赤い色が見える。
「ママ、あの赤いのお花?」
「えぇ、…彼岸花」
「ヒガンバナ?」
「そう、秋の始めに咲くのよ」
「ふーん」
あの家にも
きっと咲いているだろう
誰かに教えてもらわなくても、毎年必ずそこに咲く
あの頃よりも増えている筈だ
あの人は
あの花が咲く度に
私を思い出すに違いない
「きれいだね」
「ママね、あのお花大好きなの」
「ふーん」
「でもね、毒があるのよ」
「ふーん…ドクってきれいだね」