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秘密
第2章 誘い
いつもより忙しい日だった。

サラリーマンや買物ついでの主婦達が昼食をとるにはうってつけの場所にある洋食レストランは、ランチタイムはもちろん、午後の休憩にもよく利用される。

今日は暑さのせいか涼む為に立ち寄る客が多く、沙織は余計な事を考える暇もなく忙しく動き回った。


「今日はあの人来なかったわね」


客がまばらになった午後2時半、パントリーでカップにコーヒーを注ぎながら純子が囁く。


「えっ?」

「ほら、1日おきに来るサラリーマン」

「あ、そういえばそうですね」


倉本の事だ。


「あの人沙織さんに気があるわよ」

「まさか…」

「やだ、鈍感ねぇ」


純子はそう言うと窓際の客にコーヒーを持って行った。

純子は勘が鋭い。

沙織は、やはり倉本にははっきり言わなければならないと自分に言い聞かせた。


「あの人忙しいランチタイムを避けて来るじゃない。あなたに話しかけ易いからよ。
きっと営業マンね」


戻ってきた純子はそう言って目配せをしながらピッチャーを手に取り、今度は水を注ぎにホールへと戻っていった。


気持ちが現実に引き戻され、胃の辺りにもやもやとした濁りを感じる。



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