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秘密
第2章 誘い
ナイフとフォークを補充している沙織のそばに、店内をラウンドしていた杏奈が戻ってきた。


「ねぇねぇ沙織さん、知ってます?」


辺りを気にしながら興奮気味に声をひそめる。


「なに?」

「純子さん、店長と付き合ってるみたいですよ」

「えっ?」


沙織の手が止まった。


「ね、信じられないでしょう?…でも私、朝、更衣室で本人から聞いたんですから」

「だって…」

「あ、来た」


杏奈が慌ててダスターを握り、空いたテーブルを片付けに行った。


「…あの子ったらもう喋ったの?」


すれ違った杏奈の背中を見送りながら、純子が呆れ顔で聞いてくる。


「あの…」

「まあいいわ。
話す相手を間違えた私が悪い、ふふっ…」


純子は悪びれもせずに沙織に笑いかけ、「誘ったのは向こうよ」と聞いてもいない事をわざわざ口にした。


「………」

「私ね、自分が女だった事を思い出したわ。…旦那とはすっかりご無沙汰だし…」

「でもオーナーが…」


純子は沙織の耳元にぬるい息を吐きかけながらゆっくりと唇を動かした。


「店長がね…、アレの後で言うのよ。
あいつが相手だと…萎えるって…ふふっ…」

「…っ…」




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