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秘密
第2章 誘い
他人事が、また沙織を傷付ける。
「店長ってさ、もう60近いのに…、凄いの…」
あとの言葉は聞こえなかった。
萎える
萎える
私が相手だと萎える
他の女となら…
自分が目を反らせていた疑問を凝視するしかなくなった。
手にしていた紙ナプキンの束が足元に散らばる。
「あらら、やっちゃった。アハハ…そんなにショックだった?」
「あ、ご、ごめんなさい」
純子が拾い集める白い紙。
それを見下ろす沙織の脳裏に、慎一郎が誰かの白い太股に唇を押し付ける動きとそこに残された印、それが鮮やかな赤となってくっきりと浮かび上がってきた。
「これ全部ゴミ箱行きだね」
「すみません…」
夫にはやはり女がいるのだろうか
毎日遅い帰宅も、月に2度の出張も、形だけの交わりも、優しい笑顔や温かな思いやりも全て、秘密を隠すための堅い鎧(よろい)なのだろうか。
いつから…
沙織はそれに気付けない自分が、妻としての役割を果たしていなかったような気がした。
違う
夫は私を裏切ったりしない
そう思いたいだけかもしれなかった。
「店長ってさ、もう60近いのに…、凄いの…」
あとの言葉は聞こえなかった。
萎える
萎える
私が相手だと萎える
他の女となら…
自分が目を反らせていた疑問を凝視するしかなくなった。
手にしていた紙ナプキンの束が足元に散らばる。
「あらら、やっちゃった。アハハ…そんなにショックだった?」
「あ、ご、ごめんなさい」
純子が拾い集める白い紙。
それを見下ろす沙織の脳裏に、慎一郎が誰かの白い太股に唇を押し付ける動きとそこに残された印、それが鮮やかな赤となってくっきりと浮かび上がってきた。
「これ全部ゴミ箱行きだね」
「すみません…」
夫にはやはり女がいるのだろうか
毎日遅い帰宅も、月に2度の出張も、形だけの交わりも、優しい笑顔や温かな思いやりも全て、秘密を隠すための堅い鎧(よろい)なのだろうか。
いつから…
沙織はそれに気付けない自分が、妻としての役割を果たしていなかったような気がした。
違う
夫は私を裏切ったりしない
そう思いたいだけかもしれなかった。