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秘密
第2章 誘い
バイトの学生に引き継いで、沙織達3人は帰り支度をしていた。

杏奈は純子に向かってしきりに「やめた方がいいですよ、バレたらどうするんですか」と説得していたが、沙織は黙っていた。


倉本に、店に来ないで欲しいと告げたら、すぐに帰ろう

早く帰って心に引っかかっている事を整理したい、気付いていなかった事を思い出すかもしれない


「黙っててくれたらバレないわよ。だから秘密よ、秘密…うふっ」


純子が杏奈を見て笑う。


誰かに話したら秘密ではなくなる…


沙織が胸の奥に沈めた秘密。

二人の教師の顔と、躰に残る見えない傷。

その薄汚れた記憶を消し去ってくれるのは夫だけだと、心のどこかで信じていた。


それが…


「お疲れ様、お先に…」


沙織は考えるのをやめ、二人を残して職場を後にした。


倉本との約束の時間にはまだ早い。

沙織は待ち合わせのレストランに行く前に、駅前の書店で気持ちを落ち着けようと歩き出した。


純子が帰るところを見届けたい

間違っても出くわすのだけはいやだ


「…っ…」


もしやこれまで一度もなかった夫や義母からの連絡が、今日に限って職場に入ったら…


沙織は悪い事ばかりを想像し、胃が重くなっていった。




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