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秘密
第2章 誘い
沙織は描いていた計画が台無しにされそうな不安にかられながら、熱くなった腕に触れた。

倉本が遠ざかる。

まだ明るい夕暮れの街を人の波に流されながら、頭1つ分飛び出した男を見つめて歩く。

近くなりすぎては離れ、離れてはまた近付いて、時々振り返る眼差しに小さく相槌をうちながら、沙織は黙ってついて行った。


夫はあんな風に振り向いてくれるだろうか

心配そうに見つめてくれるだろうか


沙織はスカートを踏まないように少しだけつまみ上げ、階段の上で振り向く倉本を見上げた。


「……」


沙織が立ち止まると、倉本はまた歩き出した。


改札の前を通り、券売機を過ぎて階段を下りる。

待ち合わせ場所だった筈のレストランが目の前にあるというのに、倉本はなぜかそこを通り過ぎて路地を曲がった。


えっ?


後ろ姿を見失った沙織は小走りにその路地を曲がる。

人影が途絶えた狭い道の途中で、倉本は沙織を待っていた。


「悪いけど予定変更だ。今すぐ冷たいビールが飲みたい」

「あ、あの、倉本さん私…」

「話は店に入ってからにしよう」

「……」


あぁ、そうだった…




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