この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘密
第2章 誘い
沙織は描いていた計画が台無しにされそうな不安にかられながら、熱くなった腕に触れた。
倉本が遠ざかる。
まだ明るい夕暮れの街を人の波に流されながら、頭1つ分飛び出した男を見つめて歩く。
近くなりすぎては離れ、離れてはまた近付いて、時々振り返る眼差しに小さく相槌をうちながら、沙織は黙ってついて行った。
夫はあんな風に振り向いてくれるだろうか
心配そうに見つめてくれるだろうか
沙織はスカートを踏まないように少しだけつまみ上げ、階段の上で振り向く倉本を見上げた。
「……」
沙織が立ち止まると、倉本はまた歩き出した。
改札の前を通り、券売機を過ぎて階段を下りる。
待ち合わせ場所だった筈のレストランが目の前にあるというのに、倉本はなぜかそこを通り過ぎて路地を曲がった。
えっ?
後ろ姿を見失った沙織は小走りにその路地を曲がる。
人影が途絶えた狭い道の途中で、倉本は沙織を待っていた。
「悪いけど予定変更だ。今すぐ冷たいビールが飲みたい」
「あ、あの、倉本さん私…」
「話は店に入ってからにしよう」
「……」
あぁ、そうだった…
倉本が遠ざかる。
まだ明るい夕暮れの街を人の波に流されながら、頭1つ分飛び出した男を見つめて歩く。
近くなりすぎては離れ、離れてはまた近付いて、時々振り返る眼差しに小さく相槌をうちながら、沙織は黙ってついて行った。
夫はあんな風に振り向いてくれるだろうか
心配そうに見つめてくれるだろうか
沙織はスカートを踏まないように少しだけつまみ上げ、階段の上で振り向く倉本を見上げた。
「……」
沙織が立ち止まると、倉本はまた歩き出した。
改札の前を通り、券売機を過ぎて階段を下りる。
待ち合わせ場所だった筈のレストランが目の前にあるというのに、倉本はなぜかそこを通り過ぎて路地を曲がった。
えっ?
後ろ姿を見失った沙織は小走りにその路地を曲がる。
人影が途絶えた狭い道の途中で、倉本は沙織を待っていた。
「悪いけど予定変更だ。今すぐ冷たいビールが飲みたい」
「あ、あの、倉本さん私…」
「話は店に入ってからにしよう」
「……」
あぁ、そうだった…