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秘密
第2章 誘い
「会えて嬉しいよ」


それには答えられずに話題を変えた。


「…そういえば、本当に残してあったのね、私の連絡先」

「あぁ、消さなくてよかったよ。あれから変えてないって言うから助かった」


沙織が正社員として勤めていた頃、社内での飲み会のお知らせ以外、倉本が連絡してきた事は一度もなかった筈だ。



違う

一度だけ…



「俺からの最後のメール覚えてる?」

「っ…、いいえ」



──1度会ってくれないか
大事な話があるんだ



「お待たせしました」


ウェイターが飲み物とお通しを持ってきた。


「それじゃあ、ひとまず乾杯」

「お疲れ様でした」


二人はジョッキとグラスを軽く合わせ、渇いた喉を潤した。


「ぷは~、やっと生き返った」


倉本の満足そうな笑顔に沙織も頬を緩める。


「何食べる?」


メニューを手に取り目を通す倉本に、沙織は「何もいらない」と小さな声で答えた。


「どうして」

「……」

「7時半までウーロン茶だけって訳にもいかないだろう?」


沙織は思い切って切り出した。


「あの、じつはお願いがあって…」


倉本の瞳が深みを増した。





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