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秘密
第2章 誘い
できない

できない…


沙織はうつ向いて唇を噛んだ。


「やっと君に手が出せた」

「やめて…」

「連絡待ってる。
わかるよね、誘ってるって」

「…っ…」


店内が急に騒がしくなり、4、5人の客が近くの席に案内されてきた。


「行こう」


倉本は立ち上がって沙織の手を取り、沙織はよろけそうになりながら着いていった。


会計を済ませた倉本に礼を言いながら外に出ると、辺りはすっかり陽が落ちて外灯がぼんやりと夏の夜を照らしていた。


「仕事でこの近くに来た時には時々ここで休憩するんだ」


倉本は店の隣にある小さな公園へと足を進める。

沙織はさっき言われた言葉が心にのし掛かり、公園の入口で足を止めた。


「帰る」

「えっ?」


沙織の言葉に倉本が振り返る。


「帰るわ」

「連絡くれる?」


沙織はうつ向いた。


「私には無理よ」

「なにが?」

「何もかも。あなたとこうしている事も、連絡を取る事も…」

「どうして…」


沙織が呆れたように顔を上げた。


「あ、当たり前でしょう? 私結婚してるのよ」


「愛されてる?」

「えっ?」

「西村さんに、ちゃんと愛されてる?」

「………」



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