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秘密
第3章 渦巻く疑念
「………」


鏡に映る顔は、いつもと変わらないように見える。


この唇はさっきまで、夫とは違う男に吸われていた

舌を受け入れ、いつの間にか自分から激しく求めてしまった

濡れていた

あんな場所で…


沙織は自分の躰を抱きしめた。
倉本の鼓動、息遣い、囁きが蘇る。

押し付けられた硬い膨らみが自分に向けられた欲望だと思うと、震えるような悦びを感じる。


──次に会う時は、…我慢しないよ


このままでは変わってしまう

変えられてしまう

それを望んでいる自分が怖い


目を瞑り、深く息を吐く。


平気な顔で生きていくのだろうか

この家で

夫や義母を裏切って…

そんな事が私にできるのだろうか


沙織は3つ並んだ歯ブラシを眺め、使い慣れた洗濯機を見つめた。

ふと思い出し、洗濯物を取り込みに二階へと階段を上がり、湿気ってしまった洗濯物を室内に掛けてエアコンを付けた。

寝室を見渡し、ベッドに腰掛ける。

夫を選んだ自分、夫と過ごした時間。

ベッドに寝転び、隣で寝ている夫を想う。


「………」


夫と出会っていなければ果たして私は、結婚というものができただろうか…


だんだん自分に戻っていく。





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