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秘密
第3章 渦巻く疑念
浅い眠りの中で、車のドアがバタンと閉まる音が聞こえた。
薄目を開けて時計を見ると深夜2時。

玄関のドアが開く音が遠く聞こえ、沙織はうつらうつらしながらも夫の帰宅にほっとした。

起きて出迎えるのが躊躇(ためら)われる。倉本の影を纏っている気がする。

明日は義母に旅行の事を伝えておこうと思いながら、沙織は浅い眠りを繰り返した。




夢を見た。

見た事のない赤い花。

誰かがそれを引き抜こうとしている。


「だめよ、せっかく綺麗に咲いているんだから」


沙織が叫ぶ。


「毒があるから」

「でもやっと咲いたのよ」

「いらない」

「やめて」

「邪魔だから」

「だめよ」


花は次々と引き抜かれ手折られて、足元が血に染まったように見える。

声の主がわからない。
男か女か、大人なのか子供なのか…

沙織は散らされた花を見つめ、哀しくて泣いた。


「それ私よ…」


泣きながらそう言い、息苦しくて目が覚めた。

いやな汗をかいていた。

ふと見ると、夫が背中を向けて眠っている。


「怖い夢を見たの…」


呼吸を整えながらそっと訴えてみた。

夫は気付かない。



カーテンの隙間から、光の線が差し込んでいた。




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