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秘密
第3章 渦巻く疑念
いったいどんな女性がこんな下着を買うのだろう


眺めていた傍から二十歳そこそこの若い女が、濃い紫色のブラジャーに手を伸ばした。

カゴには同じ色のTバックショーツが入っている。


「………」


沙織はそれを目にすると、背中を押されたように次々と思い切った色を見て回った。


「ご試着できますよ」


店員に声を掛けられたが、自分が選ぶ下着を見られる事さえも恥ずかしくなってしまい、小さく頷いただけだった。

それでも是非にと勧められ、初めて採寸をして正しいサイズを知った沙織は、今まで自分の躰をいかにいい加減に扱っていたのかを知り、鏡の前に立つ自分の裸にさえ、ずっと目を反らし続けてきた事に気付く。

時間をかけてやっと選んだのは、ワインレッドのカップの上半分に黒いレースがあしらわれたブラジャーと、お揃いのショーツだった。


大人過ぎるかな…

気に入ってくれるだろうか


日増しに大きくなってくる期待と不安は、予想できない夫の反応に対してのものだった。

未だに耳元で囁き続けるあの言葉。


──お前、いやらしい躰してるなあ


いつまでも乗り越えられないこの傷みを、拭い去ってほしい。



変わりたい

変えて欲しい

一言でいい

素敵だよと…





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