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秘密
第3章 渦巻く疑念
平日とは言っても、夏休みの観光地は家族連れや学生で賑わい、海に近い遊園地では、どのアトラクションも長蛇の列を作っている。

沙織は慎一郎と肩を並べ、その喧騒を横目に海の方へと歩いていた。

二人は遊園地から程近いホテルにチェックインを済ませ、辺りを散策しに出たところだった。

部屋に案内された時に窓から眺めた景色を、沙織はとても気に入っていた。

陽が落ちて夜になれば、観覧車はイルミネーションに輝き、その向こうに小さく見える古びた煉瓦作りの建物群は、ライトアップされて落ち着いた夜を鮮やかに彩ってくれるだろう。

沙織は横を歩く夫の様子を伺いながら、気持ちが明るくなってきた。

少しだけ夫に近付き、手を繋いでみようと思い付いた。


「沙織、ほらあれ…」

「えっ?」


ホテルの窓から見た赤茶けた建物の前を過ぎ、海に近付いたところで慎一郎が前を指差した。


「わぁ…豪華客船ね」

「あぁ」

「世界中を旅するのよね」

「そうだよ」


まるで大きなビルのように見える巨大な船が、対岸の埠頭に停泊している。


「どんな人達が乗っているのかしら」

「時間とお金のある元気なリタイア組だろう」

「いいなぁ…」

「そうだね」



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