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秘密
第3章 渦巻く疑念
「ねぇあなた、私達も…」
不意に慎一郎はポケットから携帯を取り出し、沙織に「待って」と片手で合図してから背中を向ける。
沙織はため息をついた。
「はい、そうです…。
あ、その件は了承済みですので…はい、もちろん大丈夫です、…はい、はい、…えぇ…」
今日3度目の電話だった。
慎一郎の上司、相崎は社内でも有能な人物で、その片腕として信頼を得ている慎一郎は大きな仕事を任されつつあるらしい。
土日になかなか休みが取れない沙織を気遣い平日に休みを取ったことで、会社からは頻繁に伝達や確認の電話が入ってくる。
沙織は自分の為に休暇を取ってくれた夫を責める訳にもいかず、せっかくの楽しい気分が途切れないように青空を飛び交うカモメや目の前の客船を眺めていた。
沖に目をやれば、古くから栄えた港町のシンボルでもある近代的な橋の下を貨物船が行き交っている。
海風が潮の香りを運び、鳥達の鳴き声とともに日常を遠くに追いやってくれていた。
「ごめん」
「お仕事大丈夫?」
「うん、まぁ、ちょっと気難しいクライアントの件でね」
「そう」
不意に慎一郎はポケットから携帯を取り出し、沙織に「待って」と片手で合図してから背中を向ける。
沙織はため息をついた。
「はい、そうです…。
あ、その件は了承済みですので…はい、もちろん大丈夫です、…はい、はい、…えぇ…」
今日3度目の電話だった。
慎一郎の上司、相崎は社内でも有能な人物で、その片腕として信頼を得ている慎一郎は大きな仕事を任されつつあるらしい。
土日になかなか休みが取れない沙織を気遣い平日に休みを取ったことで、会社からは頻繁に伝達や確認の電話が入ってくる。
沙織は自分の為に休暇を取ってくれた夫を責める訳にもいかず、せっかくの楽しい気分が途切れないように青空を飛び交うカモメや目の前の客船を眺めていた。
沖に目をやれば、古くから栄えた港町のシンボルでもある近代的な橋の下を貨物船が行き交っている。
海風が潮の香りを運び、鳥達の鳴き声とともに日常を遠くに追いやってくれていた。
「ごめん」
「お仕事大丈夫?」
「うん、まぁ、ちょっと気難しいクライアントの件でね」
「そう」