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秘密
第3章 渦巻く疑念
「沙織…」


慎一郎が席に戻って来た。

「なあに?」


うつ向きかげんに立っている夫を沙織は不思議そうに見上げた。


「明日仕事になった」

「………」


空耳のように感じる


「ごめん」

「えっ…どうして?」

「何度も練り直して完成させたつもりの企画にクレームがついた」

「そ、それって明日じゃなきゃだめなの?」

「期限が迫ってるんだ」

「…そう…」


何を言えばいいのだろう

だって今の今まで…


「明日一番でここを出るよ、沙織はどうする」

「えっ?」

「一度家に帰って着替えなくちゃならないんだ」

「そ、そうよね」

「遅刻してでも来いって言われてしまって…、ホントにごめん」


「あ、い、いいのよ。
無理言ってお休み取って貰ったんだもの。それに今日だけでも充分楽しかったし。
私、せっかくだから少しゆっくりして帰るわ、お土産も買いたいし」


気持ちよく送り出してくれた義母や純子達の顔が浮かんだ。


「そうか…、そうだね」

「じゃあ早くお部屋に戻って、お風呂に入ったりしなくちゃ」


沙織は急いで立ち上がった。


「ごめん」

「平気よ、また次があるわ」


会計を済ませて部屋に向かう時、沙織は夫の腕を掴んだ。




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