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秘密
第3章 渦巻く疑念
頭を夫の肩に乗せ、エレベーターに乗り、無機質に見えてくる部屋までの廊下を、ゆっくりと寄り添って歩いた。

歩く速度で躰から熱がひいていき、ため息を押し殺しているせいで呼吸が途切れ途切れになる。


せめて髪を撫でてほしい


妻の想いをよそに、夫はもう明日の事を考えているようだった。


部屋に戻ると慎一郎は着替えだけを残して荷物をまとめた。

それから備え付けの寝間着と肌着を持ち「先に入るよ」と言ってバスルームに消えていった。

沙織はふぅーっと深いため息を1つついてから携帯を開いてみる。


『暑さ寒さも彼岸まで』


倉本からの今朝のメールになぜか胸が切なくなる。


すべてが今夜の自分の為だと思っていた外の景色は色あせ、暗い空だけが近く見える。


「何度も練り直して完成させたつもりの企画にクレームがついた、…か…」


沙織は小さく呟いてクスリと笑った。


私の企画にもクレームがついた

期限は

夜明けまで





沙織は慎一郎と入れ替わりにバスルームに入った。

髪と躰を念入りに洗い、髪を乾かし、用意してきた香りのいいボディクリームで肌を整える。

下着は着けなかった。

素肌に寝間着を纏った躰は再び火照りだし、沙織は呼吸を整えながら帯を前で結んだ。




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