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秘密
第3章 渦巻く疑念
こんなに明るく素敵な妻を単身赴任中に裏切り、女に走ったという慎一郎の父親の気が知れない


それを知った時の咲子の気持ちを思うと、そして今こうして明るく笑ってくれている顔を見ると、どこか自分と重ねてしまい沙織は胸の奥が熱くなった。


「今日は疲れたから早く寝るよ」


食事を終えた慎一郎が階段を上がる。


「お疲れ様、おやすみなさい」

「おやすみ」


リビングに残った二人はソファに並んで座り、スカーフを膝の上に広げて楽しげに会話を弾ませる。

咲子は淡い橙色のシルク生地の手触りを楽しみ、、四方に散りばめられた同系色の小花が素敵だと喜んだ。

沙織を残して仕事に行った息子の代わりに、咲子が気を使っているように思えてくる。

沙織は気になっていた昨夜の電話の件をさりげなく聞いてみた。


「お義母さん、昨夜慎一郎さんから電話がありましたか?」

「えっ…いいえ、……どうして?」


咲子は突然の質問に目を丸くして沙織を見つめ、質問を返した。


「あ、いぇ、いいんです」


うつむく沙織の顔を咲子が覗き込む。


聞くべきじゃなかった



沙織は後悔した。




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