この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘密
第4章 乱されて
指が震える。
『どこへ行けばいいですか?』
沙織はそう返信してから振り向いた。
女性の小さな後ろ姿が遠ざかっていく。
地獄花…
地獄の入口に咲いているのだろうか
私はそこに、足を踏み入れるのだろうか
沙織は駅に向かって歩きだした。
震える指先を握り締め、前だけを見つめた。
頬にあたる風は優しく、微かに秋を匂わせる。
いつも寂しかった
掴めないものに手を伸ばし続けていた
『どういう事なのかわかってるよね』
駅のホームで倉本からのメールを受け取る。
沙織は画面を見つめ、深く息を吸い込んでから指先を動かした。
『わかっています』
送信した瞬間から夫が遠ざかる。
夫への疑念も失望も忘れ去ったかのように、倉本の存在が沙織の心を占領していた。
『逃がさないよ』
頬に赤みが差し、瞳が潤んだ。背筋を伸ばし胸を張り、真っ直ぐに前を見つめてしっかりと立った。
こんな私でも、愛してくれる人がいるんです
切なくて叫びたい程だった。
コトコトと速くなる胸の高鳴りを誰かに伝えたい。
「─…っ…」
それは少女の恋とは違う、孤独で淫靡な秘密の始まりだった。
『どこへ行けばいいですか?』
沙織はそう返信してから振り向いた。
女性の小さな後ろ姿が遠ざかっていく。
地獄花…
地獄の入口に咲いているのだろうか
私はそこに、足を踏み入れるのだろうか
沙織は駅に向かって歩きだした。
震える指先を握り締め、前だけを見つめた。
頬にあたる風は優しく、微かに秋を匂わせる。
いつも寂しかった
掴めないものに手を伸ばし続けていた
『どういう事なのかわかってるよね』
駅のホームで倉本からのメールを受け取る。
沙織は画面を見つめ、深く息を吸い込んでから指先を動かした。
『わかっています』
送信した瞬間から夫が遠ざかる。
夫への疑念も失望も忘れ去ったかのように、倉本の存在が沙織の心を占領していた。
『逃がさないよ』
頬に赤みが差し、瞳が潤んだ。背筋を伸ばし胸を張り、真っ直ぐに前を見つめてしっかりと立った。
こんな私でも、愛してくれる人がいるんです
切なくて叫びたい程だった。
コトコトと速くなる胸の高鳴りを誰かに伝えたい。
「─…っ…」
それは少女の恋とは違う、孤独で淫靡な秘密の始まりだった。