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秘密
第4章 乱されて
金曜日の朝、いつものように遅くなると言う慎一郎を笑顔で見送り、沙織はその背中を暫く眺めていた。


「沙織さん、私もそろそろ行くわ」

「早いんですね」

「そうなの。結婚式の仲人さんに着付けを頼まれてて…」


咲子は慌ただしく自室に入り、すぐに出て来た。


「あの、お義母さん」


玄関で靴を履く咲子に声を掛けた。


「なあに?」

「今日は職場の人と食事をしてから帰ります」


咲子が嬉しそうに沙織を見た。


「あらいいわね、それじゃあ私も外で済ませてくるわ、洗い物が楽だもの、うふふ。
あら、そのワンピースにするなら口紅はもっと赤い方が映えるわよ」

「えっ、そうですか?」

「そうよ。
お仕事済んだら色を変えるといいわ、きっと素敵よ」

「…はい」

「素直でよろしい。
うふふ、それじゃ、いってきます」

「いってらっしゃい」


ごめんなさい
嘘をついて…


リビングで受話器を握った。


「おはようございます。あ、オーナーですか?
西村ですけど、実は今、実家の母から急に具合が悪くなったって連絡があったんです…はい、えぇ、一人暮らしなもので……そうですか、ありがとうございます。
はい、申し訳ありませんがよろしくお願いします」



嘘つきになっていく





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