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秘密
第4章 乱されて
家を出るまで、沙織は何度も着替え、シャワーを浴び、化粧を直した。


倉本が指定してきたホテルは沙織の職場から2駅離れた場所にあり、約束の時間よりも早く着いてしまった沙織は、駅前の花屋で時間を持て余していた。

そこはこの近辺では名の知れた大型店で、沙織は以前咲子に付き合って花の種や苗を買いに来たことがあった。

咲子はここの苗が一番良いと言い、時には常連客でもある松野と一緒に出掛け、リビングに飾る花を買ってくる。

仕事中の咲子が現れる筈もないのに、沙織はそわそわと落ち着かなかった。




何度も時間を確認しながらようやく店を出る。

携帯で地図を確認しながら駅を通り過ぎ、2つ目の路地を右に曲がった。


「……」


そこは駅近くだとは思えない程ひっそりと静まり返り、幾つかのビジネスホテルが冷たく建ち並んでいた。

通りの奥で煙草をふかしていた男が沙織を見つけ、急ぎ足で近づいてくる。


「………」


沙織は急に怖じ気づいて足を止めた。

男の急ぎ足がゆっくりとした足取りに変わり、やがて目の前で止まった。


「部屋で何か飲む?」


心配そうな顔で倉本が顔を覗き込む。


「あ、えぇ…」

「行こう」


倉本の背中を見つめながら、緊張で固まってしまいそうな沙織の躰がドクンと脈を打った。




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