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秘密
第4章 乱されて
周囲のホテルと変わらないその建物は、人目が気になってしょうがない沙織をすんなりと飲み込んだ。

開いたエレベーターから手を繋いだ男女が降りてくる。
「アッ…」と慌てて目を背ける沙織をよそに、何食わぬ顔で2人は通り過ぎて行った。

沙織は倉本の後ろに隠れ、恥ずかしさと戸惑いで逃げ出したくなってきた。


ここを利用する者たちの目的はひとつしかない

私も同じ目的で…


そう見られる事に抵抗を感じながら、子供じゃあるまいしと自分に言い聞かせ、倉本の後に続く。

ひとつのドアの前を過ぎる時に聞こえた泣き叫ぶような女の声。
それは性を貪る獣達の露骨さを沙織に教え、場違いな場所に紛れ込んでしまったような違和感が沙織の躰を硬くした。


「ここだ…」


倉本が番号を確かめてドアを開けた。


「………」


中に通された沙織の眼に映ったのは、薄暗い部屋の真ん中に明るく浮かび上がったキングサイズのベッドだった。


「…っ…」


息を飲んだ。


「何にする?」


屈んだ倉本が、小さな冷蔵庫を覗きながら沙織を見た。


「…あの、…私やっぱり…」

「えっ?」

「……できない」


倉本は立ち上がり、沙織に手を伸ばした。




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