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秘密
第5章 仮面の下
洗濯機に汚れ物を入れ、下着をネットに入れながら、ふと咲子のこれまでを思い浮かべる。


40才で離婚してからずっと、義母は1人だったのだろうか

女の元へ行った夫への恨みは…

淋しい夜は…

誰かにあの白い素肌を捧げた事があったのだろうか

今は…



沙織は今も充分に美しい咲子と、働き詰めでろくにお洒落もしない自分の母親を比べていた。


30代半ばで夫を亡くした母は、私を育てる為だけに生きていた

女の悦びを封印していたのだろうか?

それとも…



「……」


沙織は中学の修学旅行から帰る途中、家から知らない男が出て行った時の事を思い出した。

父の友人が訪ねて来たのだと沙織に話す母の薄化粧が妙に美しかった。

それから暫く経ったある夜、トイレに起きた沙織がふと覗いた襖の向こうで、奈美子は飲めない酒をあおり、放送を終えたテレビを付けっぱなしにしたまま肩を震わせて泣いていた。


あれは

恋の終わりだったのだろうか…




キッチンで目玉焼きを作りながら、沙織はそれぞれの哀しさを思った。

そしていつも温かい二人の母達への申し訳なさが募った。


「沙織さん、パンが焼けたわ」


咲子の声がした。






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