この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
秘密
第5章 仮面の下
駅へと歩く道の途中で携帯を開いた。
『今起きた。
君は出勤途中かな。
次はいつ会える?
近いうちにまた、出張を早めに切り上げて君と抱き合いたい』
倉本の言葉はすぐに沙織の胸をときめかせる。
『真面目にお仕事してください』
沙織は落ち着き払ったふりをした。
『俺の真面目さはよく知っているだろう?
いつだって真面目さ、もちろん君にも』
携帯を胸に押し当てる。
高まる気持ちを押さえようにも、嬉しさに頬が染まる。
慎一郎に抱いた事のない感情に心が弾み、自分を強く欲してくれる倉本に惹かれる気持ちを抑えきれない。
すぐに逢いたい
今夜にでも
熱い視線で見つめて欲しい
そう思いつつ、立ち止まり唇を咬んだ。
今日は夫が家で待っている
夜は久しぶりに家族揃って平和な食卓を囲むのだろう
『私も真面目な主婦なんです』
自分に言い聞かせるように送信ボタンを押した。
駅の改札を通ったところで携帯が震えた。
『そうだね。
そうだった、ごめん』
「………」
咲いたばかりの花が、雨に打たれてすぐに散っていくような虚しさを噛み締め、沙織は目の前を通過していく急行を見送っていた。
『今起きた。
君は出勤途中かな。
次はいつ会える?
近いうちにまた、出張を早めに切り上げて君と抱き合いたい』
倉本の言葉はすぐに沙織の胸をときめかせる。
『真面目にお仕事してください』
沙織は落ち着き払ったふりをした。
『俺の真面目さはよく知っているだろう?
いつだって真面目さ、もちろん君にも』
携帯を胸に押し当てる。
高まる気持ちを押さえようにも、嬉しさに頬が染まる。
慎一郎に抱いた事のない感情に心が弾み、自分を強く欲してくれる倉本に惹かれる気持ちを抑えきれない。
すぐに逢いたい
今夜にでも
熱い視線で見つめて欲しい
そう思いつつ、立ち止まり唇を咬んだ。
今日は夫が家で待っている
夜は久しぶりに家族揃って平和な食卓を囲むのだろう
『私も真面目な主婦なんです』
自分に言い聞かせるように送信ボタンを押した。
駅の改札を通ったところで携帯が震えた。
『そうだね。
そうだった、ごめん』
「………」
咲いたばかりの花が、雨に打たれてすぐに散っていくような虚しさを噛み締め、沙織は目の前を通過していく急行を見送っていた。