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秘密
第5章 仮面の下
「そういえば、今朝はまだオーナーの姿が見えませんね」


杏奈が店のガラスを拭きながら純子に話し掛けている。


「じつは店長…、アノ事で疑われてるって言ってたから、……ケンカでもしたんじゃないの?」


「えぇっ?」


沙織と杏奈が口を揃えた。


「そんなのんきな事言ってて大丈夫なんですか?」


部外者のような口振りに呆れて、杏奈の声が大きくなった。


「シィーッ…、大丈夫でしょ。疑ってるだけでバレてないんだし」


自信なのか余裕なのか、焦る様子のない純子の態度に沙織と杏奈は顔を見合わせた。


「もうやめた方が…」

「そうですよぉ、危険過ぎます」

「でもねぇ、店長は私にすっかり夢中だし仕方ないわよ。
まぁ、暫くは気をつけるわ、ふふっ…」


純子は以前からオーナーの浅田道子を嫌っている。
それを知っている二人は、密かな優越感に浸っている純子をなんとかして止めたかった。


「ホントに、バレちゃったらどうするんですか?」


杏奈が心配そうに聞いた。


「ふふっ、見ものよねぇ…アハハッ…」


二人は鼻先で笑う純子の冷やかな顔に呆れ返り、何も言えずにただ呆然としていた。




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