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秘密
第5章 仮面の下
「だから寝てろって言ったじゃないか…」

「…ごめんなさい」

「すぐ病院にいくぞ」

「いえ、自分で行けますから…」


歩こうとした道子は再びふらついた。


「道子っ…」


コックコートを着た夫の太い腕に倒れ込み、か細い道子はヒョイと抱き上げられた。


「西村さん、悪いけど私の車のドアを開けてくれないか?」


「は、はい…」


沙織は車のカギを受け取り、裏の駐車場に向かった。


「あとは、しっかりやってくれよ」


キッチンのスタッフに指示する浅田の声が響く。

ドアを開けて待っている沙織を道子が気にしていた。


「滋さん、みっともないわ。もう下ろしてください、私歩けます。
ただの貧血ですから」

「あぁ、すぐに下ろすよ」

「あの、沙織さん、ごめんなさい。
お店…、ご予約の方もお願いしますね。…あ、レジのお金…」

「道子、もういいから」

「そうですよオーナー、あとは任せて下さい」


道子は助手席を倒してゆったりと座らされ、浅田がそっとドアを閉じた。

青白い顔の道子がすまなそうに沙織に頭を下げ、二人を乗せた車は静かに走り去った。


店長…


慌てていた浅田は一度も純子を見なかった。
大切なものを抱え、コックコートを着たまま運んで行った。



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