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桜宴香~おうえんか~
第1章 桜宴香
「っくしゅん!」
自分のクシャミでふと気が付くと辺りは少し明るくなりかけている。
あれ?俺……
自分の身なりを確認するときちんとシャツを着てズボンも履いていた。
桜の木を背中にジャケットをかけて眠りこけていたようだ。
さくらは???
慌てて立ち上がって見回してみたけれど、彼女の姿はどこにもなかった。
やっぱり夢だったのか……?
あんなに都合いいことが起こるはずがないもんな。
そう思いながらもジャケットを確認すると確かに汚れている。
うっすらとした湿り気を帯びたそれは彼女の残り香と……残念ながら俺の精液も混じっているようだが。
ふと視線を上げると花びらがひらひらと舞った。
まるで彼女が優しく微笑んでいるように見える。
木の幹を見ると粘土のある液体が幹に付着していて、おそらく自分の精液だと確認できる。
桜の木が俺を哀れんで相手をしてくれたのかな……
「ありがとう」
木を抱きしめて礼を言うと家路へと急いだ。
とにかく寒くて風邪を引きそうだったから。