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桜宴香~おうえんか~
第1章 桜宴香
週明け。いつもどおり出社する。
明け方帰宅した昨日、仕事が入ると思っていたけど呼び出しもなく、おかげでゆっくりと家で休むことができた。
ちょっと身体がだるい気がしなくもないが、何とか風邪は引かずにすんだようだ。
また“日常”が始まる。
忙しく仕事をこなしていると、
「なあ、なんかいいことあったのか?」
隣の席の同僚に声をかけられた。
「いや、どうして?」
「珍しく鼻歌とか歌ってるから。だいたいお前、いつもしかめっ面して仕事してんのに今日はちょっと頬が緩んでる感じだし」
そう言われて初めて浮かれている自分に気づく。
あれは夢。だけど最高にいい夢だった。
「まあな。ひさしぶりに夢見がよかったんだ」
自然と笑みが浮かんでくる。
……我ながら気持ち悪いな。
でもあの夢は忘れかけていた何かを思い出させてくれて、すごく元気になれた。
また仕事も頑張ろうだなんて思ってる自分がいて驚いている。
脳裏に焼き付いた彼女の姿や声はまるで俺への応援歌のようで、心なしか効率も上がってる気がする。
よっぽど楽しい夢だったんだなぁという同僚の声を背に聞きながら、隣の課まで書類を届けに歩いた。