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桜宴香~おうえんか~
第1章 桜宴香
「よぉ!杉浦。花見おつかれさん」
花見中に声をかけてくれた、あの課長がまた声をかけてくる。
「あ、課長。お疲れ様でした。中抜けしてしまってすみません」
社交辞令的に挨拶をすると、顔をずいっと寄せて
「どうだ?中抜けして中出しできたか?」
小声でそんなことを聞いてきて、ガハハと笑う。
なんだ?昼間からシモネタかよ。しかも微妙に合ってるし。
「はい???残念ながら夢に終わったようです」
ごまかすように眉をしかめて書類を手渡すと長居無用とばかりに踵を返し、立ち去ろうとした。
「由依ってば本当に鈍いんだから!何?その傷!膝以外にどこ擦りむいたの?」
「だって……転んじゃったんだもん。肘と背中も服が擦れるとちょっと痛むけど」
目の前を女性社員が足早歩いて行くのをなんとなく目で追いかけてハッとする。
“彼女”だ。
呼ばれていた名前も、髪の長さも違うけれど。メガネもかけているけれど。
彼女が通りすぎてすぐ、ふわりと漂ってきた香り。
それに足元……靴の留め金についたチャーム。
間違いない。