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大地の恋
第4章 再会
それから継母に改めて挨拶して千花ちゃんの家を出た。


帰り道、 俺は千花ちゃんの事を考えていた。
なんてことはない、千花ちゃんと過ごした時間を思い返していただけだけど…



翌朝、会社のエレベーターに乗ると閉まりかけたドアを縫うように林が乗り込んできた。



「おはようございます」


「…おはよう」


涼しい顔の林をチラ見した。
こいつは千花ちゃんが大切にしてきたものを……
沸々と怒りが込み上げる。


「…随分怖い顔で睨むんですね」


「は?」


「そんなに悔しかったんですか?」


林は俺の顔など見ずにシレッと言った。


「…どっちかに気持ちのないような一方的なモンなんかしたうちに入んねーだろ」


「へえ…さすが板橋さん。深い言葉だなぁ…」


「さすがって…お前が俺の何知ってんだよ」


「…そこそこ知ってますよ、俺の昔の彼女板橋さんに遊ばれちゃいましたから」



誰だろうと頭の中を巡らせる俺はやっぱりどうしようもない男だと思う。


「……腹いせか?」


「今更…でも俺あなたにだけは負けたくないんですよね」


「そうか…残念だな、勝つも負けるも俺には関係ない話だ」


林が俺を見た。
俺も林の方を向くと必然的に視線が絡む。


「でも千花ちゃんの気持ちを無視するようなことだけはもうするなよ」



「板橋さんの忠告は不本意ですけどそれだけは受け入れます。俺ももう千花ちゃんのあんな顔は見たくないんで」


「………」


そしてエレベーターが止まり扉が開くと林は力強く歩き出す。
……俺なんかよりずっと潔いじゃないか。


千花ちゃんの想いに応えられないと言いながら今のまま手の届くところには居てほしい。
それでいながら真優の事は忘れられない……


それが今の俺の正直なところだから。



「……なんだそれ」



改めて意識したらあまりにも都合が良くて乾いた笑いが零れた。



我儘で女々しくて虚しくて情けない……


そんな俺の何が千花ちゃんは良かったのだろうか。


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